ほぼ日書評チャレンジ中

このページにはプロモーションが含まれています。

電力会社の送電網から独立したオフグリッドの節電ノウハウを福島第一原発元エンジニアに学ぶ

この記事は約5分で読めます。

「みんなの節電生活」(著・木村俊雄, 自由国民社, 2023年4月発売)の感想です。

日ごろ、勤務先グループ会社の電力使用量を集計しつつ、脱炭素のための全EV化とか原発再稼働ってどうなのよ?などと考えながら暮らしているわけですが、そういや自分の家庭の電気については無頓着だったなあということで手にとってみました。

本書「みんなの節電生活」は「座学編」と「実践編」に分かれています。

「座学編」では電気の使い方の基本がわかりやすく解説されています。一部が幻冬舎の「THE GOLD ONLINE」で公開されていますので、ご参考。

【第1回】 電気代節約の新常識…「電気ポットでお湯を沸かす」のはNG! 省エネのプロが語る「最高に効率が良い電気の使い方」とは【元東電エンジニアが解説】 2023/04/30

電気代節約の新常識…「電気ポットでお湯を沸かす」のはNG! 省エネのプロが語る「最高に効率が良い電気の使い方」とは【元東電エンジニアが解説】 | ゴールドオンライン
電気代の高騰は、家計に大きな影響を与えています。本記事では、元東京電力福島第一原発のエンジニアであり、現在は電力を自給自足でまかなう「オフグリッド生活」を続けながらエネルギー問題への考察を積み重ねる木村俊雄氏が、著書『みんなの節電生活──省エネのプロが教える』(自由国民社)から、電気代高騰を乗り切るための「節電術」につ...

ちなみに我が家は、この段階でNGでしたね。「電気ポットでお湯を沸かす」のように、電気を熱に戻して使うのは「笑止千万」の非効率な使い方だそうですが、うちの電力使用量のほとんどは、あたためや暖房に消えているのでした。

TVや炊飯器、電子レンジ、乾燥機、食洗器は持っていない、照明は40W電球のみ(LEDに切替中)ということで、かなり優等生の部類に入るかと自負していたのですが、まだまだ甘かったようです。

それはさておき、本書の「実践編」は「節電チャレンジ」と題して、1日目~31日目のプラクティスという形で構成されています。

といっても、すべてのチャレンジを1カ月で成し遂げるのは、相当の覚悟が必要だと思われます。

いやね、1日目は電気のご使用量のお知らせを保管するところから始まり、その後は主電源を切ったり箒を使ったりと、わりとゆるやかな節電方法が紹介されているんですよ。

それが14日目の「ごはんを「直火」で炊く」あたりから一気にハードルが上がり、20日目からは暖房に頼らない体づくり、瞑想や祈りによるメンタル形成に踏み込み、27日目にはミニマムな太陽光発電システムを導入、最終日には「オフグリッド生活」を目指すところにまで至ります。

オフグリッドとは、電力会社の送電網から独立した電力システムのこと。

著者の木村さんのお宅では、ソーラーパネル9枚を設置、リユースの鉛バッテリーを12~24個備え、最低6日間は充電せずに生活できるシステムが構築されているそうです。

本書最終ページの一節を引用します。

オフグリッド化する最大のメリットは、自給した限りあるエネルギーに生活様式を合わせて生きていく思想を体現でき、電力会社から完全に自由になれることにあります。
出典:「みんなの節電生活」P.95

そう、本書で言う「節電」の最終形態は、電力の自給とそれに合わせた生活様式の確立なのでした。

もちろんそういった生活は、現在のところ、誰もがすぐに採用できるものではないでしょう。しかし、多くの人が本書に書かれた「電気は最高級のエネルギー」「生活に必要なエネルギーのすべてを電気に頼るのは大間違い」を知ることで、「みんなの節電」の底上げができそうな気がします。

ところで、「みんなの節電生活」著者の木村俊雄さんは、元福島第一原発のエンジニアだった人です。東日本大震災の9年前、在職中に原発の危険性に気がつき、退職して反原発運動に転じました。Amazonの本書のページのプロフィール欄より引用します。

1964年秋田県生まれ。元東京電力福島第一原発エンジニア。東電学園高等部を卒業後、東京電力に入社。福島第一原子力発電所では、原子炉の設計・管理やプラントの運転管理、各種調査などを長きにわたって担当する。
在職中に原発の危険性に気づき、2000年に退職するとともに反原発運動の旗手となる。「福島第一原発事故を予見した唯一の人物」として、国内外のメディアに注目される。
東日本大震災後に福島県から高知県に移住。オフグリッド生活を続けながら、エネルギー問題への考察を積み重ねている。著書に『電気がなくても、人は死なない。』(洋泉社)、『原発亡国論』(駒草出版)がある。

お名前で検索してみて、「文藝春秋」に「3・11の福島第一原発1号機が壊れたのは津波の前だった」というリポートが掲載され、話題になった人であることがわかりました。2019年9月の週プレNEWSで、そのリポートについての木村さんのインタビューが読めます。

東電の隠蔽ぶりを暴く!【緊急対談】古賀茂明×元東京電力原発炉心技術者・木村俊雄「原発は津波の前に壊れていた」 - 社会 - ニュース
元東電の原発炉心技術者である木村俊雄氏が『文藝春秋』9月号にて発表したあるリポートが話題を呼んでいる。それは、「3・11の福島第一原発1号機が壊れたのは津波の前だった」という衝撃的なものだった。そ...

いやー、福島第一原発の事故の原因は、津波で電源がさらわれたことだとこの12年ずっと聞かされてきましたが、炉心を知り尽くしたというプラントエンジニアが疑義を呈していたとは。知りませんでした。

週プレのインタビューであらためて「原発には反対?」と問われた木村さんはこう答えています。

古賀 木村さんは炉心屋として長く原発に関わってきた人ですが、原発には反対?

木村 オレ、今、高知を拠点に自給エネルギーチームを結成して、太陽光発電を普及させる仕事しているんですよ。電力会社から電気を買わず、オフグリッド(電力会社の送電網につながっていない電力システムのこと)で暮らしたいという人の注文で、個人でメンテ可能な自家発電設備を北は北海道から南は沖縄まで、もう100ヵ所以上は造ったかな。その活動が原発に対するオレの答え。

出典:東電の隠蔽ぶりを暴く!【緊急対談】古賀茂明×元東京電力原発炉心技術者・木村俊雄「原発は津波の前に壊れていた」(2019年09月27日)|週プレNEWS

オフグリッドで暮らしたいという人の支援。こんな戦い方もあるんですね。

タイトルとURLをコピーしました