映画「電気工事士(原題:Electrician)」を見たのでその感想です。
「電気工事士」は、2019年イギリスのインディペンデント映画です。私はAmazon Primeで観たのですが、アマプラのページには、ストーリーについてこのような説明があります。
孤独な電気技師は、家族との絆を取り戻したいと考えているが、そのためには逃げようとした過去を訪れる必要があることを知っている
まあ、そのような作品ではありますが、これではあまりに不親切ですね…。そこでこのページでは、スティーヴ・コンウェイ監督の映画「電気工事士」の内容をネタバレしない範囲でご紹介したいと思います。
タイトルが「電気工事士」ということで興味を持った皆さんが、この映画を観てみるかどうかを判断する材料のひとつになれば幸いです!
作品情報
映画「電気工事士」のトレーラーです。サムネイル画像にずらりと映画祭の受賞のマークが並んでいます。
私が確認できたところでは、2020年の「Florence Film Awards」「Hollywood Gold Awards」「New York Movie Awards」「Top Indie Film Awards」で最優秀の監督賞、作品賞、音楽賞などを受賞したとのこと。
ほか4つの映画祭にもノミネートされています。
Electrician – Awards – IMDb
監督のスティーヴ・コンウェイ(Steve Conway)は、脚本、撮影もひとりで手掛け、5年かけてこの映画を撮りました。
あまり情報が見当たらないのですが、2021年に「Artificial Dreams」という短編ドキュメンタリー映画を手掛けている人です。
主演はロリー・ファレリー(Rory Farrelly)。彼を含め、出演者はみな、撮影時にはプロの俳優ではなかったとのこと。
この映画以外の情報を見つけることができませんが、そのことがこの映画のドキュメンタリー感を高めるのに役立っているような気がします。
映画「電気工事士」のあらすじ
主人公は電気工事士のマーク。殺風景な部屋に一人で住み、同僚とのつきあいもせずに黙々と仕事をしています。
彼が家でご飯を食べている場面、出勤する場面、職場で電気の配線工事をしている場面、休憩中に同僚の与太話を聞いている場面の繰り返しが、この映画のほとんど。
そこに、ちょこちょこ不穏な要素が差し挟まれ、物語が少しずつ展開していきます。
- 同じ現場で働いている同僚たちからは、変人だと思われている
- 資格持ちだから給料がよさそうだと、妬まれてもいるようだ
- 最近、変な咳が出るようになり、医者にかかることになった
- 奥さんとの離婚で離ればなれになった息子に会いたいと思っている
- 奥さんからは絶縁されているようだ
- 息子に会うため、同じく絶縁中の義兄(奥さんの兄)にコンタクトを取る
- マークと義兄は2年前に何か事件を起こし、義兄はマークに借りがあるようだ
マークの職業が「電気工事士」である必然性はないかな、と思いました。建設工事の現場にかかわる何らかの資格持ちであればストーリーは成り立つような気がします。
もしかしたら主演として選んだロリー・ファレリー氏が、たまたま電気の資格持ちだったのかもしれません。職場のシーンでは、マークが器用に電線の絶縁被覆をはぎ取ったり、ジョイントボックスを組み立てている様子が描かれます。
ちなみに私は、少し前に第二種電工事士の試験を受けようと思い立ち、実技試験用の工具と電線キット購入を検討する直前までいきましたので、「ああ、あれだ」とちょっとうれしくなりました。
こちらは第一種試験の対策用ですが、ジョイントボックスの組み立てがわかる動画です。
感想
映画を観終わった直後は、ちょっと戸惑いましたね。正直、置いてけぼり感がありました。
観る前、「電気工事士」というタイトルの映画ということで、次のようなストーリーしか思いつかなかった私には、ちょっと難しかったかもしれません。
- 開始20分後ぐらいに宇宙人かテロリストが攻めてくるか大災害が起こるかし、主人公の電気工事士が自らのスキルを活かして未曽有のピンチから世界を救う
- 大規模な停電の際の事故で家族を奪われた電気工事士は、事故の原因は大手電力会社の不祥事によるものと偶然知る。復讐を決意した電気工事士。事態は国家を巻き込んだスキャンダルに発展する
- 誠実な電気工事士の裏の顔は猟奇殺人者だった。簡素な彼のアパートには隠し部屋があり、そこでは夜な夜な工具と電流を使った凄惨な拷問が行われていた
ネタバレになるといけませんので、結末についてのコメントは避けます。
ただ、仕事をさぼって与太話ばかりしている同僚の一人の「ああいう奴は大きな怒りを抱えてるもんなんだ」というマークへの評価は、意外と核心をついていたのかもなあという印象です。