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非化石価値取引市場とは?ややこしい仕組みや証書の種類を5分で解説!

非化石価値取引市場とは ESG
この記事は約5分で読めます。

唐突ですが、「非化石価値取引市場」ってわかりにくくないですか?電力の市場のひとつなんですけども。

わかりにくい原因は、2018年にスタートした新しい市場であること、そして扱われている商品がややこしいことではないかと思います。例えば、商品のひとつである「非FIT非化石証書(再エネ指定なし)」。字面からは環境にいいのか悪いのかよく分かりません。

そこでこの記事では、「非化石価値取引市場」とは何かをなるべくざっくりと、わかりやすくお届けします。最近になって、会社の再エネ電力の調達にかかわることになった皆さんのお役に立てましたら幸いです。

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非化石価値取引市場とは?

脱炭素化が叫ばれる世の中において、二酸化炭素を出さない方法で作られた電力は、そうでないより電力より価値が高いとされています。

例えば、再生可能エネルギーや原子力で作られた電力は、石炭や天然ガスなど化石燃料で作られた電力より、二酸化炭素を出さない分だけ価値があるということになっています。

この発電のさいに二酸化炭素を出さないという価値を証書にしたものが「非化石証書」です。「非化石価値取引市場」というところで取引されています。

買い手は、電力を販売する小売電気事業者の皆さん。

小売電気事業者の皆さんは、「電力卸売市場」というところで調達した電気と、非化石証書市場で買った非化石証書を組み合わせて、CO2を出さないクリーンな電力として販売することができます。図解にするとこんな感じ。

非化石価値取引市場とは

なぜそんな面倒くさいことをするかというと、電力卸売市場では、非化石電源(再生可能エネルギー、原子力など)に由来するものと化石電源(石炭、液化天然ガスなど)に由来するものを分けて売るということをしていません。小売電気事業者さんが再エネの電力だけを買いたくても、指名買いをすることができないのです。

ここで、「ふーん、それはイヤだな。うちは再エネ電力を売りたいから再エネの発電所と契約するよ」「いっそ自分で発電するよ」とできる小売電気事業者さんはいいのですが、皆が皆、そういうわけにもいかないというのが現状です。

しかし再エネ電力がほしい!というお客はどんどん増えています。また、小売電気事業者さん自身も、「2030年までに取り扱う電力の44%を非化石電源にする」という法律上の義務を抱えています

そこで国は、電力卸売市場の入り口で、再生可能エネルギー、原子力など非化石電源由来のものの非化石価値を分離し、電力そのものとは別に「非化石価値取引市場」というところで売買することにしました。

非化石価値取引市場で売買されている非化石価値を証書という形で買うことによって、電力卸売市場で電力を調達する小売電気事業者さんも、「実質再エネ」の電力を売ることができるようになったというわけです。

なお、電力卸売市場も非化石価値取引市場も「日本卸電力取引所(JEPX)」という組織によって運営されています。

JEPX
一般社団法人日本卸電力取引所は、我が国で唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所です。

非化石価値取引市場で販売されている証書の種類は?

さて、ここまでの話では、非化石証書というものは、卸電力市場に集まってくる電力のうち、二酸化炭素を出さない方法でつくった電力の「非化石価値」を切りはなしたものです、というお話をしました。

ややこしいのは証書の種類です。非化石証書には、「FIT非化石証書」「非FIT非化石証書(再エネ指定)」「非FIT非化石証書(再エネ指定なし)」の三つがあります。

非化石証書の種類

「FIT(フィット)」とは、電力会社が再生可能エネルギー発電の電力を一定期間、固定価格で買い取る制度です。昔ながらの電源と比べて、まだコストの高い再エネ発電を支援する補助金みたいなもので、2012年にスタートして以来、日本の再エネの普及を助けてきました。

このFITの認定を受けている発電設備でつくった電力の非化石価値を証書化したものが「FIT非化石証書」です。

他方、「非FIT」がつく非化石証書は、FIT認定を受けていない発電設備でつくった電力の非化石価値を証書化したもの。「再エネ指定」と「再エネ指定なし」に分類されます。

「再エネ指定」は、FITの買取期間が終了した(一般に「卒FIT」とよばれる)設備でつくられた電力や、FITの対象にならない大型の水力発電による電力の非化石価値を証書化したもの。

「指定なし」は原子力発電や廃棄物による発電が対象です。

非化石価値の価格は、非化石価値取引市場のオークションで決まります。

例えば、2021年11月に実施されたオークションの結果は、FIT非化石価値が0.33円/kWh、非FIT(再エネ指定)と非FIT(再エネ指定なし)はともに0.6円/kWhでした。

JEPX
一般社団法人日本卸電力取引所は、我が国で唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所です。

「再エネ価値取引市場」と「非化石価値取引市場」の違いは?

ところで、非化石価値取引市場の買い手は、小売電気事業者さんだという話をしましたが、電力の需要家(電力を使う人ということでここでは「ユーザー」ということにします)の皆さんは非化石価値市場に参加することはできないのでしょうか?

結論からいいますと、これはできません。非化石価値取引市場で非化石価値を買うことができるのは、小売電気事業者さんだけです。

非化石価値取引市場とは

しかし、2021年に新しく始まった「再エネ価値取引市場」のオークションには、電気の小売りをしないユーザーも参加できることになっています。「FIT非化石証書」に限ってですが、ユーザーが直接、市場から非化石価値を買うことができるのです。

資源エネルギー庁の資料では、こう説明されています。

従来は電気を小売する事業者のみがこの証書を購入することができましたが、昨今の世界的な脱炭素化の流れの中で、今後カーボンニュートラルの実現に向けて需要家に非化石証書調達手段の多様化が求められることを踏まえ、 11月からは需要家が直接「非化石証書」を市場において購入することができるようになります。

出典:再エネ価値取引市場とは|令和3年7月 資源エネルギー庁

実質再エネの電気を調達する手段が増えるのはいいことですが、ますます仕組みが複雑になってきた感がありますね。今のうちに、「非化石価値取引市場」の仕組みの基本をしっかり押さえておきましょう!

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