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文書ごとに最適なフォントを選んで効果的に使う方法を書体デザイナーが直接伝授!

もじ部 クリエイティブ
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日頃、ワードやパワポなどで文書を作っていて、フォントの選び方が分からず迷うことが多い。印刷をする必要はほとんどないので、スクリーン上の見映えだけを考えればいいのだが、その点、デフォルトの「MS明朝」「MSゴシック」「Century」はあんまり好きでない。何というか、収まりが悪い気がする。

MS明朝とMSゴシックとCentury

ゴシック系のフォントでは、「メイリオ」が好きなのだが、変に行間が空いちゃうし、どうすればいいのかと。会社PCだと、好き勝手にフォントをインストールするわけにもいかないし。

MSゴシックとメイリオ

などとモヤモヤしていたところ、『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(編著・雪朱里+グラフィック社編集部』という本に出会った。

本書は、『デザインのひきだし』誌の「もじ部!フォントの目利きになる!」という連載企画をまとめたもの。さまざまな書体デザイナーのみなさんが、「もじ部長」として、フォント開発の背景や、フォントの使い方、見分け方を教えてくれるというものだ。

もじ部長として登場するのは、新ゴ、リュウミンの開発に携わり、小塚明朝・小塚ゴシックの生みの親である小塚昌彦氏、ヒラギノでおなじみ字游工房の鳥海修氏、「金シャチフォント」を開発したタイププロジェクトの鈴木功氏ら14組。

フォントの開発で有名なモリサワ文研、イワタの会社見学があったり、アドビシステムズのタイプチームや、映画タイトルの専門家の話が聞けたりもする。

特筆すべきは、それぞれの「もじ部」のページの見出しや本文が関連する書体で組まれており、どこでどのフォントが使用されているのか分かるようになっていること。

Webなどで、限られた文字数のフォントの見本を眺めていても、いまひとつピンと来ないが、実際に使用されているところを見ると、それぞれのフォントが醸し出す雰囲気というものがあるのだな、ということが分かる。

個人的に、特に収穫だったのは、以下の知識が得られたこと。

「Georgia」「Verdana」は英国の著名な書体デザイナーによって作られた

http://www.myfonts.com/person/Matthew_Carter/

本書の「もじ部長」の一人、マシュー・カーター氏は、企業や雑誌のための数々の専用書体を開発してきた人。女性向けの雑誌などでよく使われる筆記体のフォント「Shelly script」のデザイナーでもある。Windowsに入ってる英文書体「Georgia」「Verdana」は、カーター氏がマイクロソフトから依頼されて、スクリーン用にデザインしたフォントだ。

goergiaとverdana

いや、英文フォントはWindowsにもたくさん入っているのだが、選び方がよく分からず…何気なく選んだフォントが「それを選ぶのは恥ずかしい」と認定されているやつだったら嫌だし。

その点、著名なデザイナーの作品なら間違いなさそうだ。ということで、Georgiaを使ってみたところ、見やすく、スタイリッシュ。これで私のWordの英文フォント事情は格段によくなった。

MS明朝は骨格は悪くないらしい

ところで、MS明朝は、デザイナーの皆さんの間では、「骨格は悪くないが、よくない」ということになっているらしい。本書の巻末付録「もじもじ座談会」に、字游工房の鳥海修氏、ブックデザイナーの祖父江慎氏、フォントワークスの藤田重信氏の3人がMS明朝について語っているパートがあったので、引用させてもらう。

鳥海 MS明朝は、本明朝の骨格をベースに、細くしてデザインしています。つまり、骨格そのものは悪くない。じゃあどこが悪いかというと、デジタル化の手続きに何か問題があったんじゃないかと思う。

祖父江 うん、骨格はかなりいいんだけど、でも、どこか頼りない感じになってしまう。

鳥海 そう、頼りない。

藤田 MS明朝は、個々の漢字や仮名を見ていくと、かっこいい文字もある。でも、それを組んだ状態で見ると、残念ながらあまりよくない。とくにWindows上で見るとすっきりしない。Macと比べると、さらにひどく見えてしまう。だからマイナスの印象が強いんじゃないですかね。

本明朝は、杉本幸治氏とリョービイマジクス(当時)が設計したフォント。

本明朝
※画像はTypeBank フォントファミリー 本明朝より引用。

他方、MS明朝は、マイクロソフトと共同でリコーが開発したという。上と同じ文をワードで打ってみた。

MS明朝とMSP明朝

確かにひとつひとつの文字を見ると、ほぼ同じ形をしている。しかし、並べてみるとギスギスしていてとっ散らかった印象だ。まさに「どうしてこうなった」。というか、どうにかしてほしい。

なお、私の和文フォントの問題は、本書をもってしても、今のところ解決していない。自分のPC(Windows8.1)に、「游明朝」と「游ゴシック」が入っているのを発見して小躍りしたのだが、スクリーンで10~12ポイントぐらいで見ると、ぼやけてしまうんだよなあ。

主な和文フォントの見分け方も分かる

ということで、私のフォント問題は半分だけ解決したわけだが、『もじ部』には他にも有益な情報が多数掲載されている。

例えば、主要な和文フォントの見分け方。「竹」フォントや「イワタUD新聞明朝」をデザインした竹下直幸氏が「もじ部長」を務める回で紹介されていた。それぞれの「か」「た」「な」「の」「水」「国」「東」「分」の形を頭に入れておくといいという。これらの字は、書体の特徴が出やすく、使用頻度が高いらしい。

かたなの水国東分

ここでは、MS明朝(上)と游明朝の比較をしてみたが、竹下氏の「もじ部」では、「かたなの水国東分」を使ったヒラギノ、リュウミン、小塚書体などの見分け方が紹介されている。

その他、駅の「非常電話」「立入禁止」などの案内版や、機械に取り付けられている銘板(型式、製造年月日を記したプレート)に使用されている「機械彫刻用標準書体」制作現場のレポートなども掲載されていて、面白かった。

書体、フォントの見分け方、選び方、開発のプロセスに興味がある方は、ぜひご一読を。

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