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「センスがいい」と言われたいなら勉強して「知識」を身につければそれでいい

センスは知識からはじまる クリエイティブ
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自分には「センスがない」と思っており、「センスがよくなる方法は?」「センスのいい人とは?」という疑問を抱いたことのある人は少なからずいるのではないだろうか。「そもそもセンスとは何か?」と考えたことのある人も多いだろう。

私もその一人で、「センスがよい」とは「さりげなくおしゃれ」「何となくいい感じ」とざっくりと定義した上で、服やインテリアを選ぶ際、またイラストその他の作品を作る際に、センスがよくなりたいと願ってきた。

しかし、どうやら天性のそういった資質はなさそうだ、ということにある日気が付いたので、少し勉強をすることにした。例えば、カラーコーディネーター検定や色彩検定を受けてみたり、デザインの基礎の本を読んでみたり。「センスがいい」という状態があるとして、そこに知識で近づこうとしたのだ。

その甲斐あって、納得できる服選びができるようになったり、イラストの色使いで困らなくなったり、ポスターのデザイン等でたまに人に褒められるようになったりはした。しかし、どこかで思っていた。「本当にセンスのいい人は、知識なんかに頼らなくてもいいんだろうなあ」と。

知識でセンスはよくなる?

なので、グッドカンパニーデザインの水野学氏の本には、救われた気になった。水野氏は、「くまモン」や農林水産省のCI、中川政七商店のブランディングなどを手掛けてきたクリエイティブディレクター。一般に「センスのいい」と思われている人物だ。

そんな人が、「センスとは知識の集積である」とし、センスを身に付けたければ、知識を蓄えろと言っている。

ここでいう「知識」とは、有名な芸術作品とそれが作られた背景、配色やレイアウトの技法、フォントの使い方、それぞれの分野における「王道」と最近の流行などが含まれる。

そして、それらの知識を、客観性をもって自分や対象物に適用し、最適の答えを導き出すことができる状態、それが筆者の言う「センスのいい」状態だ、と私は解した(下記のように、「センスがいい」という言葉がモノについても使われているので、ちょっと混乱するけど)。

「センスのいい家具を選びたいのに、選べない」という人は、もともとインテリアについてさほど知識がありません。それなのに何軒かインテリアショップを見て、せいぜい五~六冊の雑誌を眺めたぐらいで「私にはわからない」と言ってしまいます。
 しかし、ぱっと見ただけでセンスのいい家具を選べる人は、おそらくインテリア雑誌の100冊や200冊には軽く目を通しています。あるいは、お店を回ったり、詳しい人に話を聞いて、それに匹敵するような情報を得ているはずです。勉強のような辛い努力ではなく、趣味として楽しんでいたかもしれませんが、結果、膨大な知識の集積が行われているはずなのです。さらに「自分の部屋」について客観的に見る目も持っているので、ふさわしい家具が選べるのです。
(P.94より)

センスがよくなる魔法のコツみたいなのを期待していた人は、おそらく本書を読んでがっかりしたり腹を立てたりするかもしれない。ラクして痩せたいという人に、「まず己の現状を知り、カロリー計算をしながら食事をしたり運動したりしろ」とアドバイスするのに近いからだ。

しかし、考え方を変えてみよう。勉強でセンスがよくなるとしたら、安いものではないだろうか。少なくとも、デザインの分野で名を成した人にありがちな、「本物に触れろ」「借金してでも世界を見ろ」的なアドバイスがなかったことで、私はほっとした。

本書では、効率よく知識を増やし、センスのいい結論を出すためのコツが語られている。知識を増やすプロセスは3つ。

センスのいい結論を導き出すためのコツ

  1. 王道から解いていく
  2. 今、流行しているものを知る
  3. 「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる

まず、1.そのジャンルで「定番」「スタンダード」と呼ばれる製品(例えばジーンズであればリーバイス501など)を知り、次に2.ファッション誌などで最新の流行を調べ、3.以上のプロセスで得た知識の共通項を探り、自分なりの知識を精製する、というものだ。

そしてそこから仮説を立て、それらを検証して結論に至るというプロセスを踏めば、「ある程度のラインまでいけます」とのことだ。

これらのプロセスを、具体的な状況に落とし込んだ例も掲載されている。ベルギーをイメージしたチョコレートの新商品のパッケージデザインの決定を任されたら?という設定。

  1. まずは王道のチョコレートに知識をひもとく。ベルギーの高級チョコや、ロングセラーの商品など。
  2. 競合他社の最近の人気商品や、話題の新進ショコラティエの作品をリサーチ。
  3. 上記プロセスで知ったチョコレートの共通項や一定のルールを探る。例えば「パッケージの色は、赤や茶など暖色系が多い」という共通項を発見したら、その理由を考えてみる。

その上で、「チョコのパッケージは暖色系がよい」という仮説を立て、「茶色にするとして、ありがちなので補色の青を入れてみては?」「ベルギーチョコのイメージだから、そのへんの書体を使ってみよう」などという検証を経て、結論に至るというという具合。

さらに、デザインに関する基礎知識があればよいとのこと。「文字や写真はまずは四角の中に収まるように置き、そこから崩していく」「余白の幅は統一されていた方が美しい」「文章が並んでいる時は、各行の両端を揃える」「使う書体は2~3種類」「文字間の余白が均一に見えるように調節する」などなど。

このへんの知識は、「グラフィックデザインの基礎」的な本を読むことで仕入れることができる。

なんなら、インターネットにも情報はあふれているし。そうそう、現在は「王道」や「流行」の情報収集だって、インターネットで簡単にできるのだ。「自分にはセンスがない」と嘆いている時間はもったいない。服の着こなしやインテリア、プレゼン資料、ポスターデザインなど、自分が解決すべきジャンルの知識をまずはお勉強である。

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