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ロードムービー的に体感しながら理解が深まる「色弱」の世界の見え方とカラーユニバーサルの実際例

色弱が世界を変える-カラーユニバーサルデザイン最前線 クリエイティブ
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NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構の副理事長で、ご自身もいわゆる「色弱」に分類される視覚を持つ伊賀公一さんの『色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線』を読みました。

この記事を書くにあたって、他の人が書いた本書のレビューをアマゾンでチェックしてみたところ、「本の題名と内容が合ってない。‘最前線’というので期待して読んだら単なる自伝だった」という内容のものがありました。

確かにこれは著者の伊賀さんの自伝的エッセイで、「カラーユニバーサルデザイン(以下「CUD」と書きます)の今」的なものではありません。がっかりする人がいるのも頷けます。

しかし、一般的な色覚を持つ人が、色弱と呼ばれる色覚の人の世界の見え方を体感するのには、とてもいい教材だと思うんですよね。

・子供の頃、絵の先生に怒鳴られたこと

・色名が書かれたクレヨンの巻き紙を友達にむかれちゃって困ったこと

・学生の頃、服装の色の選択がとんでもなかったのだけれども、折りしもサイケデリックカラーがブームだったので、単にサイケの人だと思われていたこと

・なりゆきで始めた照明さんのアルバイトで、大物演歌歌手の舞台を担当した際に大失敗

などなど。青春ロードムービーとして楽しみつつ、「ああ、一般の色覚と異なると、こういう場合に困るのだな」という事例がすっと頭に入ってくるところがいいなあと思いました。

この本を読んでからは、絵を描いたりホームページの素材を作ったりするときに、色による見分けに頼らないように心がけるようにしています。色相ではなく明度や彩度に差をつけたり、色と色の境目に線を入れたり。

そうすることによって、色弱の方だけではなく、お年寄りなど視力の弱い方、ひいては一般色覚の人にとっても見やすいものになるわけですから、CUDという視点が手に入って本当によかったと思います。

ただ、困っちゃったのは、目立ちを気にしなくていい場面で、ペールトーンどうしの配色、たとえば薄いグレーとピンクなんかの組み合わせをしようとした時なんかに、これまでと違って心がざわつくようになったってことなんですよね。

「ああ、この配色をしても、一部の人には認識してもらえないんだなあ」と。伊賀さんと同じタイプの色覚の人には、薄いグレーとピンクは同じように見えるそうです)。

もちろん、伊賀さんをはじめCUDを提唱している人は、誰にでも見やすい配色だけにしよう、と言っているわけではありません。デザインと見やすさの両立をどうするか。なかなか難しい問題です。

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