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生物多様性COP15「昆明宣言」と「愛知目標」の違いは?

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“COP15が「昆明宣言」 生物多様性守る新たな目標 確実に採択を”というNHKニュースの見出しを目にして、愛知目標の後継が決まったのだな、と一瞬思ったのですが違いました。ニュース本文をよく読むと、「2010年に採択された『愛知目標』に代わる新たな目標を今後、確実に採択するとした『昆明宣言』を取りまとめました」とあります。

生物の多様性をどう守るかを話し合う国連の会議、COP15は中国南西部の昆明で閣僚級の会合を開き、2010年に採択された「愛知目標」に代わる新たな目標を今後、確実に採択するとした「昆明宣言」を取りまとめました。
この「昆明宣言」は、13日まで開かれていた閣僚級会合の成果として取りまとめられました。
宣言では「生物多様性の喪失や海洋汚染など前例のない危機が私たちの惑星と社会の営みをおびやかしている」と指摘し、その損失を食い止めるため各国が国家戦略を強化し、法整備を進める必要性などを強調しています。
そして、2010年に日本が議長国を務めた時に採択された「愛知目標」に代わる2030年を期限とする新たな目標を、今後、確実に採択するとしています。
(出典:COP15が「昆明宣言」 生物多様性守る新たな目標 確実に採択を(2021年10月14日) | NHKニュース

「昆明宣言」は、ざっくり言うと「生物多様性の喪失や海洋汚染を食い止める!そして愛知目標に代わる新たな目標を採択する!」という掛け声のようなものであって、新たな目標そのものではありません。この点、“COP15が「昆明宣言」 生物多様性守る新たな目標 確実に採択を” のように書かれてしまうと、昆明宣言が「生物多様性守る新たな目標」のように読めてしまいます。紛らわしい。

その他、このニュースは、生物多様性への取り組みにかかわるキーワードを、ある程度知っている人でないとさらっと読めないようになっており、ちょっと不親切だと思いました。そこでこの記事では、「COP15」「愛知目標」をおさらいしてから、昆明宣言とは何かを探ってみたいと思います。

まず、「COP15」の「COP」は国連の生物多様性条約締約国会議のこと。生物の種の保存や森林の保護なんかが話し合われる会議です。「15」は「第15回」という意味。「COP15」で「生物多様性条約第15回締約国会議」という意味になります。

ここで、「あれ?“COP26”って言葉を最近よく聞くけど?」という皆さんのためにご説明しますと、「COP26」の「COP」は国連気候変動枠組条約の締約国会議のこと。こちらは地球温暖化を防ぐための取り組みについて話し合う会議です。パリ協定なんかもここで決められました。「COP26」で「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」という意味になります(ちなみにパリ協定はCOP21の成果でした)。

「COP」は、「Conference of the Parties(締約国会議)」の頭文字を取ったものです。なのでそこは「生物COP15」とか「気候COP26」などと言ってくれないと分かりにくいわけですが、「COP」の後ろに付けられる数字と周辺のキーワードで分かるだろ、と言わんばかりの報道がなされることがあり、一般市民に知らしめる気があるのかな?と疑問に思う次第です。

さて、COPの意味をご理解いただいたところで、次は「愛知目標」です。昆明宣言は、これに代わる新たな目標を「今後、確実に採択する」と言っているわけですが、そもそも愛知目標とは何でしょう?

「愛知目標」は、2010年に生物多様性COP10で採択された「戦略計画2011-2020」の一部です。「戦略計画2011-2020」は、2050年までの中長期目標(ビジョン)、2020年までの短期目標(ミッション)と、それらを達成するための「20の個別目標」からできていますが、この「20の個別目標」の別名が「愛知目標」。生物多様性COP10が日本の愛知県名古屋市で開催されたので、この名が付きました。

環境省の「戦略計画2011-2020」のページでは、こう解説されています。

愛知目標は、戦略計画2011-2020で、2050年までに「自然と共生する世界」を実現することをめざし、2020年までに生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急の行動を実施するという20の個別目標です。
<出典:戦略計画2011-2020のビジョンとミッション及び個別目標 『愛知目標』 | 生物多様性 -Biodiversity-

上記、環境省のページには、20の個別目標が掲載されていますが、いちどに把握するのは困難ですので、ここは上記のNHKニュースの続きにならってざっくりと、「愛知目標」では、野生動物の個体数の減少や森林破壊を食い止めることなどが掲げられた、という理解でよいかと思います。そして、目標の多くは達成できなかったという評価となっているようですね。

「愛知目標」では野生動物の個体数の減少や森林破壊を食い止めることなどが掲げられましたが、その多くは達成できず、新たな目標ではどれだけ野心的な内容を打ち出せるかが焦点です。
(出典:COP15が「昆明宣言」 生物多様性守る新たな目標 確実に採択を(2021年10月14日) | NHKニュース)

さて、そんな愛知目標の後継となる新たな目標を採択するよ!ということを宣言した昆明宣言ですが、肝心の新しい目標はいつ決まるのでしょうか。

まさか次の生物多様性COP16?だとしたら今回のCOP15は何をしたこのになるの?という話になりそうですが、これは違います。COP15は、異例の二部構成で、2021年10月11~15日の第1部と、2022年4月~5月の第2部という形で開催されます。新目標の採択は、第2部で行われるようですね。

それにしても愛知目標の20の個別目標というのはいかにも多いな、という気がしたのですが、後継は2030年までの目標ということで、それにちなんで30個とかになったりするのでしょうか。生物多様性にはさまざまな国の利害が絡んでおり、また対処すべき課題も山積しているので、目標が多いというのは分かりますが、スローガン的なところはもっとシンプルにならないものかなあと思います。

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