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『ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱』を読んだ感想

eyecatch

お母さんのクローゼット=「ママクロ」がヴィンテージの宝庫かもしれない件でもちょこっと触れた『ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱』を読み終えたので、今日はその感想を。いや、いい本ですわ、これ。

著者のエリザベス・L. クラインさんによると、こんな本。

2012年6月に本書の単行本を刊行して以来、興味を持ってくれた人たちに対して、わたしは気がつくと同じことを言い続けていた。「格安ファッションについての本じゃないんです」。本書は、格安ファッションに限らず、アパレル業界全体について書いた本だ。全価格帯を網羅しており、ブランドから縫製工場、消費者に至るまで、ありとあらゆる関係者が登場する。そのうえで、すべてが常軌を逸するに至った経緯を、詳細にリポートした。消費者の取材では、頭のてっぺんから爪の先まで Forever 21 の服で固めた事務系のインターンの学生から、ブランドの靴一足に800ドルを投じるブランド中毒者、7ドルの靴を買うのが精いっぱいという人まで、あらゆる購買層を対象とした。

(『ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱』あとがき—ペーパーバック版原書によせて より。漢数字はアラビア数字に置き換えてある)

「関係者」としては、上記の他に繊維再生業者、エシカルファッション(良識にかなって生産、流通されているファッション商品という意味)やヴィンテージの衣服を扱うショップオーナー等が登場。

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ファッションに興味がある人はもちろん、持続可能な社会、企業の社会的責任、中国の経済成長、途上国の労働環境、地場産業の振興、デザインの盗用などが気になる人は必読。アパレル企業にとっては、都合の悪そうな話がたくさん書かれている。

例えば、2013年にバングラデシュの首都ダッカ近郊のシャバール(サバール)で、縫製工場が入居したビルが倒壊して、1000人以上が死亡した事故の背景にあったであろう事情。

ダッカ近郊ビル崩落事故-Wikipedia

著者がバングラデシュを訪れた2010年頃には、すでに人件費が高騰した中国から、アパレル各社が生産拠点を移しており、多くの工場がブラックな状態で操業していたようだ。

ダッカの工場は、違法な場所に無計画に建設されているため、日常的に工場火災が起きている。インフラの問題も深刻で、停電も頻繁である。発電機が始動する音が、もはや首都の生活のBGMになっている。

(第七章 中国の発展と格安ファッションの終焉 より)

2015年の現在、少しは改善されているのだろうか。ちなみに、エリザベスさんは「ファッション・フォワード社」という、TOEICの問題なんかに出てきそうな名前の架空の会社のオーナーを装って、婦人服メーカーとコンタクトを取っている。なかなかスリリングである。

あと、本書が面白いのは、著者がジャーナリストであると同時に、ファッションに悩む普通の女性の側面を見せていること。

例えば、手持ちの服を数えてみたら下着類を除いて354点もあることが判明し、そのほとんどが格安ファッションだったことに愕然としたり、取材先の人がスタイリッシュなのに比べて自分の服装がイケてないことに凹んだり。

また、取材を重ねるうち、服にまつわる著者の消費行動が激変していく様子も興味深い。ファストファッションの服を買いあさっていた人が、服の購入頻度を減らし、多少高くてもちゃんとした背景の服を選ぶようになり、さらには裁縫の技術を身につけて、自分でお直しやリメイクをするまでになったというのだから、これは驚きだ。

私自身に関して言えば、ここ10年ほど年に1~2着しか衣類を買っておらず、現在着まわしている服の過半数は友人のお下がりか古着。そして、H&M、ZARA、Forever 21 の服は1着も持っていないので、搾取労働に加担している度合いは比較的低そうだ(これでユニクロがホワイトなら完璧なんだが)。

しかし今を遡ること20年前、まだ20代の頃には、毎週のように手頃な値段の服を買っていた。

「あれ?おしゃれな服が急に安くなった?これなら私でもいつでも買える!」と感動した瞬間があって、歯止めが効かなくなったんだけど、あれは今思えば、国内から中国に生産拠点が移った頃だったのかなあ。

最大で、衣装ケース6杯分ぐらいにまでなったんだけど、今残っているのは1~2枚ぐらいしかない。馬鹿なことをしたもんである。

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