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基本色彩語の意味とは?バーリンとケイの『基本の色彩語』を読んだ感想

eyecatch

色彩検定1級で学習する項目に、「基本色彩語」というのがある。公式テキストでは、「色々な色を表す言葉(色彩語)の中で、もっとも基本的な色カテゴリーを作り出す働きを持つ言葉のこと」と解説されており、文化人類学者バーリンと言語学者ケイの1969年の研究発表がきっかけで定着したという。

以下、色彩検定1級公式テキストの引用。2009年改訂版テキストの58ページより。

これまでは色空間の分割は、諸民族のそれぞれのやり方で任意に行われていると考えられてきました。しかし、実際にはそれほど無規則ではなく、各色のカテゴリー間には一定の規則性があり、各カテゴリーの特徴をもっとも表している色には明らかな一致が認められたのです。

色彩検定的にはこのレベルの理解でOK

これを読んで、2013年に同検定1級合格を目指して勉強していた私は思った。「もっとも基本的な色カテゴリーを作り出す働きを持つ言葉」「各カテゴリーの特徴をもっとも表している色」と言われてもよくわからんなー、と。

しかし色彩検定1級の暗記事項は他にもたくさんある。そこを深掘りしている時間はない。そこで、公式テキストの記述のうち、過去問に出題されたことのある部分のみを暗記することにした。

バーリンとケイのモデルによると、まず白と黒を区別した後に赤が現れ、次に黄か緑かの区別が現れ、続いて青、茶、最後に紫とピンク、オレンジ、グレイの区別が現れるというような7段階の課程で進化するとしています。そして最終的には(中略)11種の基本色彩語が指摘されています。

この部分の

バーリンとケイ
白と黒→赤→黄か緑→青→茶→紫、ピンク、オレンジ、グレイ
7段階の課程で進化
11種の基本色彩語

というキーワードだ。

結果、合格から3年、11色の基本色彩語とその出現の順番も忘れ、「文明が進化するにつれ区別する色数が増えるらしい」という、あやふやな記憶が残るのみになった2016年。バーリンとケイの報告書が『基本の色彩語: 普遍性と進化について』として日本語で出版されているのを発見した。

これを読んで、検定勉強中にモヤモヤしていた「基本色彩語の11色が選びだされた基準って?」「文明化されてないと色の区別が少ないなんてことがあるの?」という疑問が氷解した。

バーリンとケイの「基本の色彩語」の定義とは?

本書10頁「基本の色彩語の定義」によると、基本の色彩語は以下の4つの特徴を備えた色彩を表す語句だと(読みやすいように(4)はかなり単純化してます)。

(1)単一の語彙素でできている

(2)他のどのような色彩語でも代わりに意味することができない

(3)その色彩語を使って形容する対象がごく狭く限定されない

(4)同じ言語を話す人たちが同じように使う

例えば「青みがかった色」「青緑色」などは(1)により、「赤」で代替できる「クリムゾン」「スカーレット」は(2)の基準によりアウト。

また、髪の毛や肌の色を意味する「ブロンド色」等は(3)から、また「僕のおばさんの中古シボレーにこびりついた錆の色」などの色名は(1)~(4)すべての基準から外れると解説されている。

最後の色名のブランキージェットシティー感が半端ないが、それはさておき、ある言語を使っている人がみな理解することができ、同じ色を指して用い、用途が限定されず、代替がきかない色、これが色彩検定で言う「基本色彩語」ということらしい。

そして、高度に工業化したヨーロッパやアジアの人々の言語は第7段階(その言語において白、黒、赤、黄、緑、青、茶、紫、ピンク、オレンジ、グレイに相当する語が存在する。ちなみに日本もそう)だが、少数民族で遠隔地に住み、先端技術に触れることが少ない人々の言語は、初期段階(基本色彩語が白黒しかなかったり、白黒赤のみだったり)にあるという。

基本色彩語が多いほど進化している?

ただ、基本色彩語が少ないということは、区別できる色が少ないということではない。本書にはこのような記述がある。

「自然に親しんで」暮らしている言語グループにおいては、基本の色彩語が相対的に乏しいのは、色をなぞらえる対象が幅広く周りに存在するからという調査もある(Post 1962)。例えば、染色した布や色つきの電気コードは持たなくとも、葉の細やかな色あいを比べるのが日常である言語グループの場合、よしんば心理物理的に顕現性がある色としても、緑色や青色の色相を大きくひとくくりにされては彼らは困るのかもしれない。

なるほど。試験勉強でざっと要点だけを拾っただけとはいえ、誤った理解をしていて申し訳ない、という気分になった。初期段階に分類された言語圏の人々は、広く多くの人に色を伝える必要がないので、標準化された色名を持たないだけなのだ。

検定テキストには、「7段階の課程で進化する」という解説があったが、「茶色い」「ピンクの」「オレンジ色の」「グレーの」で事足りる言語生活は、色の細やかなニュアンスの表現という点では、退化と言えるのかもしれない。

ということで、今日はバーリンとケイの『基本の色彩語: 普遍性と進化について』のご紹介。ロシア語には青を表す基本色彩語が2種類ある(暗い青色「siniy」と明るい青色「goluboy」)、なんてなトリビアも仕入れられるので、色と言語に関心のある人はぜひ。

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